■ 最新の淫慾物語


あなたとさんぽ (鵜野さらら)
08.6.7(Sat) 8:17

15: 私からのアプローチ ―嫉妬―』
 その日、私は探し物をしていました。
 DMを書いている途中でお気に入りのペンのインクが無くなってしまい、替えのインクを探していたのですが、どこか別の所にうっかり置いてしまったらしく、まだあるはずのそれがいつもの場所にない。
 自分のスペースを探し尽くし、それでも見つからなくて。
 次に探した、ふたりの共用スペース。
 箪笥やクローゼットや机の引き出し……そして見つけた、1枚の写真。

 写真はみんな、アルバムに貼ってあるはず。
 なのにこの1枚だけ、どうしてこんな所に……?

 貼り忘れただけかも、とも思いましたが……なぜか胸がザワザワして。
 裏返しに置かれていたその写真を手に取り、表に返して。

「………!」

 カァッと、顔が熱くなるのがわかりました。同時に、指先はみるみる冷たくなって。
 そこに写っていたのは、今より少し若い、高校生頃の耕太くん。そして、今と変わらず可愛らしい、晴子さんの姿。
 ふざけてじゃれ合うふたりをおさめたその写真に、私の胸の中は、不安がグルグルと渦巻いていました。

 晴子さん…というのは、昨年12月のお祭りの時、ペンションのお手伝いにきてくださった人。
 私が耕太くんとおつき合いするずっと前から、繁盛期にお手伝いをしに来てくださっていた方で。
 そして……彼女は、耕太くんの好きな人、でした……

 その事は、私も知っていました。耕太くんがフラれる、という形で終わったことも。
 だから……この写真がここにある意味が、なんなのか。
 不安が、一気に襲ってきて。
 かじかんだように動きの鈍い指でその写真を元の場所に戻すと、何度も何度も深呼吸をしてから、部屋を出ました。

 今まで一度も疑ったことがなかった耕太くんの気持ちに、初めて不安を抱いて。
 同時に……晴子さんを羨む気持ち。それも、嫌な……卑屈な気持ち。

 いやだ、こんな私。
 いやだ、みっともない。
 でも……止まらない……。

 苦しい苦しい心。初めて味わう感情。
 それを押し隠して、どうにか1日を終えることができた、その日の夜のこと……